2026年のサイバーセキュリティは、二つの極端な特徴を見せるでしょう。一つは、かつてないスピードと規模で活動する攻撃者。もう一つは、自動化と人間の判断力の間に広がる溝を埋めようとする防御側です。ソフォスの専門家は、基本的なサイバーハイジーン、設定の規律、プラットフォーム全体の可視化といった「当たり前のこと」が、これまで以上に重要になると予測しています。
AI は攻撃と防御の双方を加速させ、アイデンティティ攻撃、ビジネスメール詐欺 (BEC)、大規模な脆弱性は変化していくでしょう。同時に、組織は「自動化が人間の能力を上回ることで生じる燃え尽き症候群 (バーンアウト)」という、静かに進行している重大な脅威に直面することになります。
Microsoft 環境の保護がますます重要になる中、MDR (Managed Detection and Response) はビジネスに不可欠な機能へと進化し、さらにはサイバー保険における戦略的手段ともなります。こうした変化の中で、人間の判断に基づくセキュリティの役割こそが、どの組織が変化に耐えうるかを決定づけることになるでしょう。
本記事は、ソフォスのグローバルサイバーセキュリティ専門家チームが予測する、今後のサイバーセキュリティ動向に関するシリーズの第一弾です。
AI によって攻撃の規模は拡大し、巧妙化が加速する
「2026年、攻撃者は引き続き AI を戦力増強の手段として活用するでしょう。AI によって既知の脆弱性の武器化や攻撃キャンペーンの構築が容易になり、基本的なハッキングのハードルが下がります。また、インターネット全体での広範かつ迅速な脆弱性悪用が可能になります。
ペイロードのカスタマイズはかつてない速さで進み、ソーシャルエンジニアリングは標的に関するオープンソース情報を反映させたフィッシングなど、ますます巧妙化します。ディープフェイクの音声や動画によって BEC はより本物らしくなり、騙されるリスクが高まるでしょう。
低スキルの攻撃者であっても AI を活用すれば、それまでは経験豊富な攻撃者しか持ち得なかったスピードと精度で活動できるため、勢力の均衡が変化します。」- ソフォス CDO (最高開発責任者)、John Peterson
スピードの代償:バーンアウト
「2026年、ほぼすべての業界の組織が、人的監視やシステムへの理解を伴わずに AI による短期的成果を追求したことによる弊害を感じ始めるかもしれません。日常業務が自動化された推論に過度に依存するようになると、エラー率が上昇する可能性があります。これは人々が無関心になったからではなく、絶え間ない権限委譲が人間の判断力やパターン認識能力を徐々に鈍らせるからです。
認知的負荷は今後現実的な運用リスクとなるでしょう。マシンのペースで出力される情報は、人間の意思決定速度をはるかに上回る速度と量で流入し続け、未処理の業務は蓄積していきます。また、もはや完全には理解できないシステムを信頼しすぎる『自動化への過信』が広がり、認識しているリスクと実際のリスクの乖離が広がります。
AIが仕事のテンポを加速させ、個人や組織が持続可能な形で適応できる限界を超えると、バーンアウトが増加します。そして、人間とマシンの共同作業によって成果が生み出される環境では責任の所在が曖昧になり、トラブルが発生した際の責任者が不明確になります。そのような環境ではスピードは進化のように見えますが、その隠れた代償は、安定性の低下、レジリエンスの弱体化、そして人間の能力の侵食として現れます。」- SOC オペレーション担当バイスプレジデント、Tom Gorup
些細なことこそが重要
「2026年には大規模なサイバー攻撃が発生し、甚大な混乱を引き起こすでしょう。その根本原因は不十分なサイバーハイジーンにあり、その攻撃は完全に防げたはずのものです。」- Sophos X-Ops Counter Threat Unit 脅威リサーチ部門ディレクター、Rafe Pilling
人間による介在が、MDR の真価を決定づける
「MDR サービスは、単に特長を謳うだけでなく、意思決定プロセスに人間が関与していること (Human-in-the-loop) を証明しなければならなくなります。AI を活用した検知が当たり前になる中、顧客は自社環境を誰が監視し、誰が意思決定を行い、どこに人間の判断が適用されているのか、という透明性を求めるようになります。
自動化のみに頼る MDR サービスは、特に判断が難しい、影響の大きいインシデントにおいて信頼を得るのが困難となるでしょう。最も優れたプロバイダーとは、AIを『人間の代替』ではなく『アナリストの増強』のために活用し、調査、優先順位付け、対応を加速させる企業です。
MDR は自律性の高さを主張することによってではなく、責任ある成果によって差別化されるようになります。」- プロダクトマネジメント担当シニアバイスプレジデント、Rob Harrison
MDR の価値の高さは、サイバー保険の算定において証明される
「2026年、MDR は保険の引き受け可否、事業継続性、明確な ROI を実現するための戦略的手段となります。MDR は単なるセキュリティ投資ではなく、サイバー保険の査定においてリスクを軽減する定量的な情報源として見なされるようになります。24時間 365日の検知、脅威ハンティング・迅速な対応体を行っている組織ほど深刻な損失を被る可能性が低いことを保険会社は認識し、その成熟度に応じて保険料の優遇や補償範囲の拡大という形で報いるようになります。
AI を活用した MDR は精度と成果報告を改善し、自動化と人間の専門知識を組み合わせることで、取締役会が理解し、保険会社が信頼できるエビデンスを提供します。MDR のテレメトリは、エンドポイントの完全な保護から迅速な封じ込めに至るまで、レジリエンスの確固たる証拠となります。
保険会社がその財務的・運用的な効果を認識するにつれ、MDR は防御手段としてのみならず、事業資産としての地位をも固めていくでしょう。」- サイバーリスクパートナーシップ部門グローバルゼネラルマネージャー、Jessica Newman
Microsoft 環境の保護が最重要課題になる
「約 400 万の組織が Microsoft 365 を利用する中、Microsoft 環境の保護は、レジリエンスのある組織と無防備な組織を決定的に分ける境界線となります。
攻撃者が Entra ID、Microsoft 365、エンドポイント、クラウドワークロードを一つの相互接続されている攻撃対象領域として狙うケースが増加するにつれ、単体製品の防御では対応しきれません。セキュリティチームは、孤立したツールの使用を止め、アイデンティティ、エンドポイント、メール、クラウドの活動を網羅する一元的な可視化を採用せざるを得なくなるでしょう。
Microsoft のテレメトリをリアルタイムで関連付け、迅速かつ文脈に沿った対応が可能な組織は最新の攻撃を阻止できます。一方、デフォルト設定や断片化された制御に頼っている組織は、回避可能なリスクを負い続けることになります。」- CFO (最高製品責任者)、Raja Patel
2026年に向けたメッセージは明確です。レジリエンスを手にできるのは、強固な基盤と、責任ある「人間中心」のセキュリティオペレーションを両立させた組織です。
AI を慎重に導入し、専門家主導の MDR に投資し、主要なプラットフォームを包括的に保護する組織こそが、来るべき一年に立ち向かい、専門家が警告する「回避可能な破壊的イベント」を乗り越えることができるのです。

